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「わからない」ことから逃げずに、 若いうちからチャレンジを
親身になるということ
10年前に慶應義塾大学医学部の腎臓内分泌代謝内科に赴任して以来、私は3つの方針を掲げてきました。「患者さんの生活習慣の全般を理解する」「患者さんの体に起こっていることをすべて把握する」「生涯にわたって患者さんと付き合う」というものです。これは、患者さんに対してトータルケア、ライフロングケアを行っていく覚悟でもあります。
しかし、我々の臨床領域は非常に広範囲で、症例も多様です。また、患者さんと密に接する領域であるがゆえに、落ち込んだりプレッシャーに苛まれたりすることも少なくありません。日々の診療に疲れ、心身ともに大きなストレスがかかり、方針がぶれ、患者さんを診ることが単なる「ルーチン」に陥ってしまうこともあります。そのような時、私はいつも自分に問うことにしています。その患者さんが、「自分の親だったらどうする?」「自分だったら、どうしてほしいと思う?」と。
昨今、「EBM」(evidence-based medicine)が重要視されるあまり、マニュアル医療に甘んじてしまう傾向があることを、私は懸念しています。なぜなら、マニュアルはあくまで最大公約数的なもので、一人ひとりの患者さんの症例にあてはまらないことが、ままあるからです。ある治療法が別の治療法に比べて死亡率を下げたというEBMがあったとしても、目の前の患者さんの命を救うことができなければ、死亡率の低下はその患者さんにとって何の意味もありません。
患者さんを自分の親や自分自身に置き換えることで、その方のQOLや家族の存在にも思い至ることができます。その方の人生や家族との暮らしの中で、この病とどのように向き合っていきたいのか、そのために我々はどのような医療を行うべきか。そうした視点を持つことは、よりよい医療の提供にもつながります。個々の患者さんにベストな医療を行うためには、「Tailor made医療」が必要であり、それを実践する鍵は親身に思う気持ち、その一点に尽きると考えています。
患者さんに対して親身に、真摯に向き合えば、そこに信頼関係が生まれ、医療訴訟なども起こらないのではないでしょうか。
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